対話型アプリケーションを自動実行する - いますぐ実践! Linuxシステム管理 / Vol.091
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いますぐ実践! Linux システム管理 / Vol.091 / 読者数:993名
こんばんは、うすだです。
登録したら、大抵は、そのページの URL を、自分でメモしておきます。
あとで、変更や解除をするときのために記録するわけですが、うっかり、 メモし忘れることが、たまにあります。
そんなところの登録を変更したり解除したくなったとき、 検索で見つかる場合もありますが、発見できないことも、 ごくまれにですが、あります。
登録したときの情報を、どこかで集中管理しておけばいいんだよなぁ…。
と考えていたときに、ふと思いつきました。
登録したら、自分のブログのどこかに(登録サイトが)トラックバックしてくれれば、 そこを参照するだけで済むのではないか、ということに。
ブログなんて、いまどきどこででも無料で作れますので、 あとは非公開のページにトラックバックしてくれれば、 すぐ実現できると思うのですが、いかがでしょうか。
…とまあ、アイデアとしてどうなのかさっぱりわかりませんが、 せっかく思いついたので、ここに記してみました。
書いてすっきりしたので、今週もはりきってまいりたいと思います。
今週のお題 - 対話型アプリケーションを自動実行する
24時間365日戦い続けるシステム管理者にとって、 自動化は永遠のテーマであると言えます。
自動化できる作業を、スクリプトを書いて cron で定期的に実行するようにできれば、 ネコの手も借りたいほどの忙しさが、緩和されます。
しかし、対話型のアプリケーションの場合、 本来人間が入力すべき文字をリダイレクトで渡しても、 うまく動作してくれないことが多々あります。
たとえば、telnet コマンドを使って、SMTP でメールを送りたいとき、
#!/bin/sh telnet localhost smtp << E-O-F HELO localhost MAIL FROM:というスクリプトを作って実行しても、SMTP のコマンドが、 タイミングよく渡されることはなく、満身の力を込めて振ったバットは、 虚しく宙を舞ってしまいます。
しかし、だからといって諦めていてはいけません。
ちゃんと、それを解決するための手段が、世の中にはあるのです。
せっかくあるのだから、それを使わない手はありませんよね。というわけで、今週は、対話型アプリケーションを自動的に実行するための方法を、 ご紹介したいと思います。
"スレッドとプロセスの違いは何ですか?"
今週は、expect というコマンドを使用します。
expect は、Tcl/Tk のアプリケーションを自動的に実行し、 テストを行うためのツールです。
ですが、別に Tcl/Tk を使っていないアプリケーションでも、 使えるようにできています。ありがたいことですね。
幸い、大抵のディストリビューションには、expect パッケージが存在します。 ただし、デフォルトではインストールされないようですので、
# yum install expect
とか、
# apt-get install expect
などと実行して、入れておいてください。
それではまず、簡単な使い方から、ご紹介したいと思います。
expect コマンドをそのまま実行しますと、対話形式で操作できるようになっています。
% expect expect1.1>
こんなふうにプロンプトを出力して、指示待ち君の状態になります。
ちょっと試すときにはいいのですが、これだと説明しづらいので、 今回はスクリプトファイルを書いて実行するという形式で、 ご紹介していきたいと思います。
というわけで最初は、簡単なところから。
以下の内容のファイルを、テキストエディタ等で作成してみてください。
#!/usr/bin/expect spawn /bin/date expect eof
作成したら、chmod コマンドで実行可能な形式にして、実行します。
たとえば、このファイルの名前が test1 なら、以下のようにします。
% chmod +x test1 % ./test1 spawn /bin/date 2007年 2月 4日 日曜日 18:59:09 JST
これは、spawn という命令で /bin/date を実行し、expect eof で終了を待つだけの、 超簡単なスクリプトです。
date コマンド自体はぜんぜん対話形式ではありませんが、基本的には、 このような形式で記述していきます。
それでは、もう少しましなスクリプトを作ってみましょう。
以下は、telnet コマンドを使って、www.usupi.org から HTTP で RSS (/kuri/index.rdf) を取得するためのスクリプトです。
#!/usr/bin/expect set host www.usupi.org set path "/kuri/index.rdf" spawn telnet $host 80 expect "Escape" send "GET $path HTTP/1.1¥rHost: $host¥rConnection: close¥r¥r" expect eof
最初の set host www.usupi.org で、変数 host に www.usupi.org を代入しています。 path も同様です。以降で出てきますが、変数名の先頭に $ をつけると、 変数を参照できます。
そして、次の4行目の spawn で、telnet コマンドを起動します。
5行目の expect では、 telnet コマンドから "Escape" という文字を含む応答があるまで待ちます。
直接 telnet コマンドを実行しますと、
"依存関係を見つけることができませんでした"
% telnet www.usupi.org 80 Trying 59.106.23.151... Connected to www.usupi.org. Escape character is '^]'.
という応答が得られますが、これの最後の Escape character ... の1行を待っているわけですね。
Escape 云々が得られたタイミングで、6行目の send を用いて、 HTTP の GET メソッドを出力します。
出力したら、あとは WWW サーバからの応答を、expect eof により、 最後まで待ちます。
というわけで、test2 という名前でスクリプトを保存したら、 以下のように実行してみましょう。
% chmod +x test2 % ./test2 spawn telnet www.usupi.org 80 Trying 59.106.23.151... Connected to www.usupi.org. Escape character is '^]'. GET /kuri/index.rdf HTTP/1.1 Host: www.usupi.org Connection: close HTTP/1.1 200 OK ...後略...
ようやく、 対話型アプリケーションの自動化っぽい領域に踏み入ることができましたね。
でも、できれば、WWW サーバやパスを引数で指定できるようにして、 汎用化したいところです。
じゃあ、そのようにしてみましょう。
以下は、先ほどのスクリプトをもとにして、引数に、 WWW サーバとパスを指定できるようにしたものです。
#!/usr/bin/expect if {$argc != 2} { puts "Usage: $argv0 host path" exit } set host [lindex $argv 0] set path [lindex $argv 1] spawn telnet $host 80 expect "Escape" send "GET $path HTTP/1.1¥rHost: $host¥rConnection: close¥r¥r" expect eof
$argc および $argv は、あらかじめ用意された変数で、それぞれ、 引数の個数と引数が代入されています。 引数に、WWW サーバ名とパスを必要としますので、 2行目で $argc が 2 であることを確認しています。
$argc が 2 でない場合は、3行目の puts で使用方法を出力し、 exit で終了します。ちなみに、$argv0 はスクリプト自身が代入されています。
そして、6〜7行目で、host と path に引数の値を代入しています。
$argv に引数すべてが含まれていますので、lindex で取り出します。
8行目の spawn 以降は、先ほどと同様です。
このスクリプトが test3 だった場合の使用例を、以下に示します。
% chmod +x test3 % ./test3 Usage: ./test3 host path % ./test3 www.google.co.jp / spawn telnet www.google.co.jp 80 Trying 72.14.253.147... Connected to www.google.co.jp. Escape character is '^]'. GET / HTTP/1.1 Host: www.google.co.jp Connection: close HTTP/1.1 200 OK ...後略...
以上、expect の簡単な使い方を、ご紹介しました。
ご紹介した内容が、あまり実用的でなかったかもという気がしておりますが、 他にも、fsck や ftp などの自動実行ができるようになると思いますので、 だまされたと思って、いろいろとお試しくださいまし。
(何か聞いてくる configure スクリプトの自動実行にも使えそうです。)
metaタグは、メモ帳編集Webテンプレート中でどこに行くのですか?
今週は、簡単な使い方で終わってしまいましたので、次週は、 もうちょい踏み込んだ内容をお届けしたいと思っております。乞うご期待…!?
宿題の答え
先週の宿題は、
RAID5 で構成されたMDデバイスで、パーティションが1つ壊れた場合に 書き込みを行うと、どうなるでしょうか。
でした。
それでは、試してみましょう。
以下のように、いまは正常な状態です。
# cat /proc/mdstat Personalities : [raid5] [raid4] md0 : active raid5 hdb3[2] hdb2[1] hdb1[0] 65280 blocks level 5, 64k chunk, algorithm 2 [3/3] [UUU] unused devices:
ここで、hdb3 を使えなくします。
# mdadm /dev/md0 -f /dev/hdb3 mdadm: set /dev/hdb3 faulty in /dev/md0
この状態で、マウントしているディレクトリに、書き込みを行います。
/mnt/data にマウントしているとして、試しに、/boot 以下をコピーしてみましょう。
# tar cf - boot | (cd /mnt/data; tar xfp -)
…あ、あれ、とくに何も起こりませんね…。
キャッシュ上にあって、/dev/md0 に書かれていないからではないか、と思い、 sync や umount してみましたが、特に問題なく実行されました。
再度マウントして書き込んだりしましたが、問題なくアクセスできます。
では、さらにもう1つ使えなくなると、どうでしょうか。
と思って1つ外し、書き込んでみたところ、すぐに、
Buffer I/O error on device md0, logical block 数字 lost page write due to I/O error on md0
というエラーが大量に出力されました。
さすがに、1つだけではダメなようです。
というわけで、確証を得たわけではないところがなんとも言えないところですが、 1つ足りないだけならなんとかなりそうな予感です。
…ですが、最悪の事態にならないよう、なるべく使用しないようにして、 早急に代わりのディスクに差し替えてくださいませ。
(新たな現象や証拠が発見され次第、再度ご紹介させていただきます。)
今週の宿題
今週の宿題は、
telnet コマンドを用いて、SMTP でメール送信する expect スクリプト を作成してください。
です。
冒頭の、動作しないシェルスクリプトを、expect で動作するようにしてみてください。 余力があれば、送信先などを引数から得られるようにすると、よいかもですよ。
あとがき
突然ですが、Open Tech Press をみていて、面白い記事を発見しました。
インターネット接続の高速化と安全化をもたらす OpenDNS
上記は、OpenDNS という、無料で使える DNS サービスの紹介記事です。
OpenDNS を使えば、以下の恩恵が受けられるようになるそうです。
- 大量のキャッシュと負荷分散による、高速なパフォーマンス。
- ドメイン名のタイプミスの自動補正。
- フィッシングサイトへのアクセスをブロック。
実際に試してみますと、確かに、名前の解決が速くなりました。
2. も、たとえば、 と、間違ったサイトにアクセスすると、 に自動修正してくれました。 微妙なミスの場合は、OpenDNS のサイトにつながり、候補を挙げてくれました。
(3. は、フィッシングサイトがわからないので未確認です…。)
で、これを利用するには、ソフトをインストールする必要はありません。
ただ単に、OpenDNS の DNS サーバを設定するだけです。
つまり、/etc/resolv.conf を以下のようにするだけで、 OpenDNS を利用できてしまうのです。
nameserver 208.67.222.222 nameserver 208.67.220.220
世の中には、いろんなサービスがものすごくたくさんありますが、 OS を問わないサービスというと、WWW 上で構築されたものだったりします。
でも、OpenDNS の場合、利用したければ、 OpenDNS の DNS サーバを設定するだけでいいわけですよ。 まさに、OS を問わないサービスです。
こんな根本的なところに、新規なサービスが存在するとは、個人的には、 ものすごい衝撃でした。やられたっ!!! って感じでした。
がんばって考えれば、まだまだ面白いことを思いつく余地があるのかも、 という気にさせられました。諦めずにがんばろうと思います。
今週も、ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
それでは、また来週に、お会いしましょう!
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